美しく、そしてどこか不穏。ページをめくるたびに異世界へと引きずり込まれるような感覚を覚えたことはありませんか?
その感覚の正体——それはエドワード・ゴーリーという一人のアーティストが描く、繊細で奇妙な線の世界かもしれません。
2025年4月12日(土)から6月8日(日)まで、高松市美術館にて開催中の特別展「エドワード・ゴーリーを巡る旅」は、そんな“不可思議の巨匠”の全貌に触れることができる、またとない機会です。
展示の主題は「子ども」「不思議な生き物」「舞台芸術」。しかし一歩足を踏み入れれば、それは単なるテーマにとどまりません。ゴーリーが生涯に渡って描き続けた「死」と「遊び」の間を漂う世界観が、250点を超える原画や資料とともに立体的に立ち現れます。
なぜ、今ゴーリーなのか?
2025年はゴーリー生誕100年。日本でも近年『うろんな客』『不幸な子供』などが再注目され、その独特な美意識に共鳴する読者が急増しています。
特にSNS世代には「不気味なのに可愛い」「ナンセンスなのに妙に深い」といった魅力が刺さり、静かなブームを呼んでいます。
本展では、書籍だけでは感じ取れない“手の痕跡”が感じられる原画が目玉。ミリ単位で刻まれた線の集合が、なぜこれほどまでに豊かな感情を喚起するのか——その答えは、ぜひ会場で確かめてください。
展覧会以上、テーマパーク未満——心を刺激する仕掛けの数々
展示室に加え、会期中はユニークな関連イベントが盛りだくさん。例えば英語による絵本読み聞かせや、実際にゴーリーのスタイルで「不思議な生き物」を描いてみるワークショップなど、大人も子どもも楽しめる参加型の企画が用意されています。
また、「Instagramストーリーズ投稿キャンペーン」では、指定スポットでの撮影&投稿によってプレゼントがもらえる仕掛けも。フォトジェニックな空間と、控えめながら不気味な演出のバランスは、思わず誰かにシェアしたくなることでしょう。
詳細・最新情報は美術館の公式Instagram(@takamatsuartmuseum)もチェックしてみてください。
「子ども」と「死」のあいだに漂う空気
ゴーリー作品の魅力は、どこか現実と地続きのようでありながら、その“どこでもない場所”感にあります。特に『不幸な子供』などでは、淡々と語られる不条理な出来事のなかに、私たちが日々感じる理不尽や喪失が、奇妙に反映されています。
今回の展覧会は、そうした感性にじかに触れられる「沈黙の対話の場」となるはずです。絵本というよりも、むしろ“詩”に近い。それでいて、思わず笑ってしまうナンセンスさもある。
静かで濃密なこの体験は、都会の喧騒に疲れた感性を優しく、でも確実に揺さぶってくれることでしょう。
行く前にチェックしておきたい情報
- 会期:2025年4月12日(土)~6月8日(日)
- 会場:高松市美術館(香川県高松市紺屋町10-4)
- 開館時間:9:30〜17:00(※金土は19:00まで、入室は閉館30分前まで)
- 観覧料:一般 1,200円、大学生 600円、高校生以下無料(※詳細・割引条件は公式サイトをご覧ください)
- 休館日:月曜日(5月5日は開館、5月7日は休館)
前売券購入者にはオリジナルポストカードの特典も。4月11日までの販売なので、気になる方はお早めに!
最後に:不条理と詩情に満ちた異界へ
エドワード・ゴーリーの絵本は、子どもには少し不気味すぎて、大人には少し懐かしすぎる。でもその“ちぐはぐな居心地の悪さ”が、現代の私たちにはちょうどいいのかもしれません。
「日常の外側に少しだけ足を踏み出したい」
そんな気分のとき、この展覧会はきっとぴったりの“旅”になるはずです。